解説　

原音のリアリティを求めて、TAD(Technical Audio Devices)やExclusive S5の設計思想を継承し、高感度・高能率をコンセプトに開発されたスピーカーシステム。

低域にはALCC(アルギン酸コンポジットコーン)振動板を使用した25cmコーン型ウーファーを2個採用しています。
このALCC振動板は、高強力ポリアリレート繊維とパルプの結合力を高めるために、アルギン酸繊維を混ぜて抄紙したもので、昆布などの海藻から抽出したアルギン酸繊維がバインダーとして作用し、結合力を向上しています。
また、磁気回路にはキャンセリングマグネットを加えた防磁型ダブルマグネット磁気回路を採用しており、14,300ガウスの高磁束密度を獲得しています。さらにT型ポールを採用しており、つねに前後で均一の磁束密度が得られるため、入力に対する振幅のリニアリティが向上しています。
さらに、小入力・大入力時の応答性を向上するため、形状の見直しを行った蝶型ダンパーを採用しています。

高域にはホーン型トゥイーターを採用しています。
ホーンドライバーには高い解像力と優れたリニアリティが得られるリアタイプのコンプレッションドライバーを搭載しています。
このコンプレッションドライバーはTADやExclusive S5と同じ方式のもので、振動板から発せられた音は、流体力学の研究から設計されたフェージングプラグによって中心部に導かれ、圧縮された音となってホーンより放射されます。とくに振動板の発音方向をリア側としたリアタイプなので、フェージングプラグの音道の長さがそれぞれ同一となり、各スリットからの音の位相の乱れが無く、高域特性が優れています。
このドライバーの振動板には、3cmの窒化チタンを採用し、振動板の背後には耐振性に優れたアルミダイキャスト製のバックカバーを装着し、不要振動の発生を抑えています。
ホーン部には、大型オーバルウェイブホーンを採用しています。このホーンは球面波を送り出すようにフレアの形を設計しており、これにより点音源に近い自然な音の広がりを実現しています。
さらにホーン開口部をラウンドさせることで、音の反射が低減され、スムースに外につながるようになっており、ホーン形状はオーバル型になっているため、水平方向の指向性が広く、広範囲なリスニングポイントで自然な音を得られます。
このホーンの素材には、成型精度が高く制振性に優れたアルミダイキャストを採用しています。
また、TADで導入された新技術のAFAST(Acoustical Filter Assisted System Tuning)を導入しており、ホーン上部にレゾネーターを設けています。これにより、位相の変化を滑らかにでき、よりしっかりとした音像定位や再生音を得られています。

ネットワーク部は、低歪率の素子だけを厳選し、さらに各ユニットごとに分散させて配置しており、これによりユニット同士の時期的な干渉を防止しています。
さらに、ネットワーク基板はエンクロージャーからフローティングさせて、各ユニットからの振動を遮断しています。

バッフルの不要振動が再生音に悪影響を与えるのを防ぐため、パイオニア独自のミッドシップマウント方式によってトゥイーター・ウーファーを固定しています。
ユニットをバッフルではなく、内部に固定することで、バッフルの不要振動を低減しています。

エンクロージャーは、低域を増強するバスレフ効果を引き出すため、フロントに2つのポートを設置しています。
同じ面積のひとつのポートに比べ、エンクロージャー内からの中音域の漏れが少なく、ユニットからの干渉による音の濁りを低減しています。
また開口部はR形状の特殊弾性体を用いているため、風切り音の発生が少なく、音波がスムースに放射されます。
さらに、低域特性を向上するために、内容積100Lの大容量エンクロージャーとしており、極厚のバッフルをラウンドバッフルとして音の回折現象を防止しています。
また、材質には音響的に吟味した高密度パーチクルボードを使用しており、仕上げはレディッシュダークブラウンカラーの花梨調仕上げとなっています。

入力端子の下部に高域レベル調整が可能なアッテネーターを搭載しており、Normal/Decreaseの2ポジションで部屋の状況に合わせた調整が可能です。

機種の定格

方式	2ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式・トールボーイ型・防磁設計
使用ユニット	低域用:25cmコーン型x2 高域用:3cmドライバー+ホーン
インピーダンス	6Ω
再生周波数帯域	28Hz～30000Hz
出力音圧レベル	96dB/W/m
最大入力	120W(EIAJ)
クロスオーバー周波数	2000Hz
外形寸法	幅330x高さ1090x奥行433mm
重量	42.0kg