Pioneer XL-A700
¥79,800(1976年頃)
解説
サーボ回路にクォーツPLLを採用したフルオートプレイヤー。
サーボ回路にクォーツPLLを採用しています。
この方式では、モーターの回転軸に取付けたジャネレーターの出力パルスと基準信号発振器のパルスを比較し、位相差(進み・遅れの時間差)を検出することにより、モーターの回転数を一定に抑えています。これにより従来の方式では捉えにくいとされていた周期の長い微少な速度変化も正確に検知し、常に正しい回転数を維持します。クォーツPLL方式では基準信号発振器の振動子に水晶を使用しており、高精度な基準信号を得ています。
また、XL-A700では回路自体の信頼性を高めるため回路のIC化を図っており、駆動回路用にはバイポーラ型IC、制御回路にはMOS型ICを採用しています。
駆動回路には両方向駆動回路を採用しており、正方向と逆方向に動作できるため、モーターの回転速度が速くなった場合にも素早い応答が可能です。
駆動モーターにはブラシレスDCサーボホールモーターを採用しています。
このモーターは、磁極切換(スイッチング)にパイオニアが製法を開発した3個のホール素子の働きを応用しており、高いS/Nと高い耐久性を得ています。
ターンテーブルには直径32.4cm、慣性質量340kg-cm2の精密加工ターンテーブルを採用しています。
また、軸・軸受には精密加工したものを採用することで優れた特性を得ています。
ストロボライトに波形整形回路を搭載しています。この回路では水晶振動子の発振周波数(3MHz帯)を電子回路で分周して点灯しており、電源周波数の変動による悪影響を排除するとともに、回転数切換時も分周比率を変えることで1本縞での調整を可能にしています。
サーボ回路には精度の高いCR発振器も内蔵しており、クォーツOFF時にも位相制御が可能です。
また、レコードを同一ピッチで比較演奏したりレコードのピッチを楽器のピッチに合わせることも可能です。回転数1%微調整時に流れる縞目は10秒間に33
1/3rpm時で5.5個、45rpmで7.5個で、回転数微調整範囲は±6%なので、約半音階まで調整ができます。
フルオート機構を搭載してます。
XL-A700では、ターンテーブル駆動用モーターとは別にアームのオート動作専用に精密ギヤモーターを採用しており、回転系に負荷がかからず、高い信頼性と耐久性を得ています。
フルオート機構ではオートリターンやオートカット、リピート演奏が可能です。また、アームを手でレコード盤上に移動させると自動的に電源ONとなるクイックプレイ機能も搭載しています。
XL-A700のリターン検出機構には、従来のメカニカルな方式に代わって光学式を採用しています。
光学式では、検出部にLEDとフォトトランジスタを組合わせており、完全無接触型となるため、アームの感度を悪化させる要因を排除できています。XL-A700では、可動スリットの重なり具合をLEDで照射し、これによって得た透光と遮光をフォトトランジスターを組合わせた検出部で検出することで、アーム位置を割り出しています。
トーンアームにはS字型パイプアームを採用しています。
このアームは実効質量の軽減を図るとともに、垂直・水平回転部にアンギュラコンタクトベアリングを採用し、摩擦を少なくして高い感度を得ています。また、アームの取付けベースには十分な強度をもった6tアルミパネルを採用し、さらにキャビネットの内側からも肉厚鋼板(6mm厚・700g)で補強することで、トーンアームをハウリングから守っています。
カートリッジにはMM型カートリッジ PC-330/IIを採用しています。
このカートリッジは特殊熱処理によるチタンパイプカンチレバーや希土類コバルトマグネット、特殊ダイヤモンド針の組み合わせによって軽質量の振動系を実現しています。さらに、片端支持方式を採用することで高域の機械インピーダンスを低く抑えることができ、音質を向上させています。
また、アルミスタイラスノブやアルミダイキャストフレームなどのパーツを採用し、共振を低減しています。
キャビネットは、モーター本体、フルオートメカ、トーンアームなどを剛性の高いアルミダイキャスト製フレームにしっかり固定し、長時間にわたって高い精度を得ています。
このダイキャストフレームの剛性と適度な内部損失を持った硬質合板を組合わせることで、ハウリングや共振を防止しています。
特殊ゴムとダイキャストソリッドを組合わせた大型インシュレーターを採用しています。
このインシュレーターは水平度調節も可能です(インシュレーター1回転につき0.5mm可変)
アンチスケーティング機構やアームエレベーション機構を搭載しています。
機種の定格
型式 | クォーツPLLダイレクトドライブフルオートプレイヤー |
<ターンテーブル部> | |
モーター | クォーツPLLホールモーター |
ターンテーブル | 32.4cm径アルミダイキャスト |
ターンテーブル慣性質量 | 340kg-cm2 |
回転数 | 33・1/3、45rpm |
回転数微調整範囲 | ±6% |
回転ムラ | 0.025%以下(WRMS) |
S/N | 62dB以上(JIS) 70dB以上(DIN-B) |
負荷変動 | 0%(針圧120g以内) |
起動特性 | 2/3回転以内 |
回転数偏差 | 0.003%以下 |
温度ドリフト | 0.00004%/℃以下 |
時間ドリフト | 0.0003%/h以下 |
<トーンアーム部> | |
形式 | スタティックバランスS字型パイプアーム |
アーム実効長 | 237mm |
オーバーハング | 15mm |
適合カートリッジ自重 | 4g~13.5g(9.0g以上サブウェイト使用) |
高さ調整範囲 | ±5mm |
カートリッジ部> | |
形式 | MM型(PC-330/II) |
構造 | シールドケース:スーパーパーマロイ フレーム:アルミ合金ダイキャスト |
針先 | 0.5milダイヤモンド |
振動系実効質量 | 0.45mg |
使用針圧範囲 | 1.0g~1.8g(1.5g適正) |
周波数特性 | 10Hz~28kHz ±3dB |
チャンネルセパレーション | 25dB以上(1kHz) 20dB以上(100Hz~10kHz) |
出力電圧 | 3mV(1kHz、50mm/sec、RMS) |
出力バランス | 1dB以内(1kHz) |
ダイナミックコンプライアンス | 12x10cm-6/dyne(100Hz、水平垂直) |
スタティックコンプライアンス | 18x10cm-6/dyne(光学式) |
出力インピーダンス | 2kΩ(1kHz) |
負荷抵抗 | 30kΩ~250kΩ(適正47kΩ+170pF) |
自重 | 6.4g |
寸法 | 幅14.8x高さ17x奥行290mm |
取付寸法 | JIS及びEIA規格 |
交換針 | PN-330/II |
<その他> | |
オート機構 | 専用ACギヤモーター使用フルオート (マニュアル、クイックプレイ可) オートリードイン オートリターン オートカット リピート |
付属機構 | アンチスケーティング機構 ラテラルバランサー 針圧直読ウェイト アーム高さ調整機構 アームエレベーション機構 ヘッドシェルスタンド(EPアダプター受共用) ストロボ照明ランプ フリーストップヒンジ 高さ調整機能付きインシュレーター |
使用半導体 | トランジスタ:9個 IC:4個 ダイオード:12個 ホール素子:3個 LED:1個 フォトトランジスタ:1個 |
供給電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 10W |
外形寸法 | 幅490x高さ200x奥行390mm |
重量 | 13.5kg |