Pioneer PC-70MC
¥45,000(1981年発売)
解説
ディスクに刻まれた音楽信号を忠実にピックアップするため、ローマス化、広帯域・ハイトラッカビリティ化、高剛性・無共振化などのベーシックな課題から掘り下げ、高忠実度再生の限界に挑戦したMCカートリッジ。
磁気回路は左右チャンネルがそれぞれ独立していて、片チャンネルあたり3極2マグネットによる構成となっています。センターヨークを挟んでマグネットを同極対向させることで、磁束をセンターヨークに集中させており、これによって小さなマグネットでより大きな磁束を作り出し、効率の良い発電を行っています。
マグネットにはエネルギー積の大きいサマリウムコバルトを採用しており、広いギャップをとっているにも関わらず高い磁束密度が得られる設計となっています。これにより、最大磁束密度10,000Gaussの高磁束密度が得られ、低音域の大振幅時から高音域の小振幅時まで、リニアで効率の良い発電が可能となっています。
磁気回路の重量は両チャンネル分を合計してもわずか0.9gで、一般的なMCカートリッジのおよそ1/4しかないため、ローマス化を可能としています。
微小コイルを左右独立にマグネットと対応させて配置しており、コイルには純度99.99%の無酸素銅線を多層巻きしたコアレス・ボビンレス構造となっています。
インピーダンス特性は100kHz付近までほぼ一定で、インピーダンス特性の変化により、音質が影響を受けることが無いため、フラットな再生音が得られます。
マグネットもコイルも、構造的に左右チャンネルをそれぞれ分離独立させており、左右信号による相互干渉を抑え、優れたチャンネルセパレーションを得ています。
カンチレバーにはベリリウムを素材として採用しており、さらにパイオニア独自の精密加工技術を駆使した真空蒸着法により、テーパー状のパイプカンチレバーとして完成させています。
これは、薄板を丸めて接合したものと違い、直接パイプ状に一体成型したことで、剛性が高まると同時に実効質量が軽減され、機械インピーダンスが非常に低くなり、確実なトレースを可能にしています。
PC-70MCでは、振動支点の明確な1点支持方式を採用しています。カンチレバーの後端をサスペンションワイヤーで支持し、ダンパーを配して振動支点の明確化を図り、ダンパーを配して振動支点の明確化を図り、トレース時に起る前後方向の振動を確実に抑えて安定した制動をかけています。
さらに、ローマス設計の良さを生かしてダンパー材の粘性制動を最小に設定し、トラッカビリティのいっそうの向上を図っています。
フレームの設計には、コンピューター解析技術を駆使してカートリッジのボディを直接加振して得たデータでダイナミックマスを測定する方法を開発し、これによって得たノウハウを基に無共振設計を施しています。
PC-70MCではボディの主要部分にアルミダイキャストを採用して共振を抑えるとともに、カートリッジをヘッドシェルに取付けるフレームに振動系を直接固定するシンプルな構造とし、中間部品を無くし、構造上共振を発生させない仕組みとなっています。
さらに、振動系をアルミダイキャストのフレームにがっちりと取付けるチャックジョイント方式を採用しており、接触箇所が従来のビス止めによる点接点から面接触となり、より密着度が向上して共振を防いでいます。
機種の定格
型式 | MCカートリッジ |
発電方式 | パイオニア方式MCカートリッジ (左右独立6極4マグネット磁気回路、ボビンレス・コアレス・ツインコイル) |
出力電圧 | 0.2mV(1kHz、最大速度振幅50mm/s、水平信号) |
出力バランス | 0.75dB以内 |
チャンネルセパレーション | 35dB以上(1kHz) 30dB以上(100Hz~10kHz) |
周波数特性 | 10Hz~80kHz |
コンプライアンス | 16x10-6cm/dyne(100Hz) 30x10-6cm/dyne(スタティック) |
内部インピーダンス | 38Ω(10Hz~80kHz) |
負荷抵抗 | 40Ω~100Ω |
カンチレバー | テーパード・ベリリウム・パイプカンチレバー |
針圧 | 1.2g ±0.3g |
針先 | 0.2x0.8mil(ダイヤモンド楕円針) |
針先実効質量 | 0.23mg |
重量 | 4.0g |
備考 | ※針交換について 当時は販売店持参での交換をしていたようです。 現在でも針交換が可能かはわかりませんが、 メーカーに問い合わせてみる事をお勧めします。 当時の針交換価格:¥31,500 |