Pioneer A-90D
¥220,000(1987年発売)
解説
D/Aコンバーターを内蔵すると共に、内部コンストラクションを練り上げ、ノイズや歪の原因となるファクターを排除したEXシリーズのステレオプリメインアンプ。
デジタル入出力は、光入力2系統、光出力1系統を搭載しています。
光ファイバーを折り曲げたり振動したりした際に、パルスの幅が変化しパルス幅歪が生じるのを防ぐため、入力側、出力側のそれぞれに光伝送歪補正回路を搭載し、ノイズを低く抑えています。
DAC部には、L/RそれぞれにD/Aコンバーターを搭載することで位相差を無くすと共に、L/Rを分離する事でセパレーションが向上しています。
このD/Aコンバーターには特別に開発したグリッチ発生の極めて少ないグリッチレスICを採用しており、これによってディグリッチャーと呼ばれるアナログスイッチを削除することができ、性能・音質を向上しています。
さらに各々のICにMSBエラー補正回路を付加し、ゼロクロス・ポイントでのリニアリティを大幅に改善しています。
また、ジッター(クロックのエッジのゆれ)による音質劣化を防ぐため、クロックを発生させるPLLに極めてジッター抑制効果の高いPLLを採用し、さらに振動の影響を避けるために発振回路を特殊樹脂でボンディングしています。
D/Aコンバーター動作時のクロックはマスタークロック1系統のみとし、他に発振している非同期なクロック(マイコンクロックなど)を無くして不要なビート成分の発生を抑えています。
デジタルフィルターは4倍オーバーサンプリングすることにより、不要な高域成分を高い帯域へ押し上げ、折り返し雑音を追放しています。
また、デジタルフィルターには高性能ICを採用しており、帯域内リップル±0.0001dB以内、減衰量100dB異常を達成しています。
ローパスフィルターには、位相特性の優れた5次バタワース型ローパスフィルターをFDNRディスクリート回路で構成し、よりなだらかな特性とするとともに位相歪を減少させています。
さらに高音質パーツや無酸素銅版バスバーを用いたアースなど徹底した高音質化を図っています。
スピーカーから出している音とは別のデジタルソースをDATにデジタル信号のまま録音できるデジタル・レコーディング・セレクターを搭載しています。(この機能はアナログソース視聴時のみ可能です)
データ復調、PLL、デジタルフィルターなどのデジタル回路と、D/Aコンバーター、アナログローパスフィルターなどのアナログ部を別基板で分離し、さらにデジタル部はシールドされています。
また、デジタル回路やマイコンなどの電源と、アナログ系の電源をトランスから分離することで音質劣化の原因となるアナログ系への妨害を防いでいます。
信号経路の最短化と適正配置化を図ったダイレクト・コンストラクションを採用しています。
まず、デジタル部とアナログ部を分離し、アナログ信号となった後の信号経路を他のアナログソースと同様に最短化しています。また、各入力ブロックはそれぞれセパレート化し、入出力ブロックをシールド化することで内部での信号の劣化や干渉を防いでいます。
また、入力ブロックではインプット&レコーディングセレクターは電気的に、メインボリュームは機械的にリモートコントロールできる構造とし、信号経路の最短化を達成しています。Adapt/Tape2端子以外の入力ソースはソース・ダイレクトスイッチをONにすれば直接メインボリュームに入り、一段とピュアなサウンドが楽しめます。
そして、パワーアンプブロックは信号の流れに沿ってレイアウトされ、パワー段の出力をストレートにスピーカーセレクターに導きます。ここでも、電源部からの配線距離を最短化させています。
スピーカーセレクターブロックでは、リレーを取り付けた基板に端子を直接取り付け、最短化を図るとともに、端子Aを優先するため、従来の端子位置とは逆にA端子をしたに配置しています。
振動を徹底して抑えるため、フレームシャーシ類に独自のハニカム形状を採用しています。
電源トランスの振動や共振を防ぐために絞りによるハニカムをトランスフレームや、フレームシャーシに、パンチングによるハニカムをボトムプレート、ボンネットケースに。また、パワートランジスタの振動や共振を効果的に抑えるためにチムニータイプのアルミの押し出しハニカムをヒートシンクに、外部振動を抑えるために樹脂成形による大型ハニカムインシュレーターを4本採用しています。さらに重量感のあるトランスを支えるために鋳鉄製の5本目のインシュレーターも採用しています。
また、トランスケースには鋳鉄を採用し、鋳鉄ケースとトランス本体の間に熱伝導性の良いピッチ素材を充填するとともに放熱フィンを設け、温度上昇によるトランス巻線の内部抵抗の増加を防止しています。
さらに、電磁誘導を起こしにくく、受けにくい大容量の新開発シールデッド・キャパシターを採用しています。
そしてボリュームでは、ロータリーノブの軸受けを中心として、両方向の重量バランスをとるという方法を採用しており、ボリューム本体に一切機械的ストレスがかからないようにし、また、アンプの振動の影響を最小に抑えるために、ボリューム基板を支えているシールドカバーを特殊紙でボディ部分からフローティングし、有害な2~4kHzの共振を吸収しています。
スイッチング歪が原理的に発生しないノン・スイッチング・サーキットTypeIIIを採用しています。
電源スイッチON直後や大信号入力時、外気温の変化などによってドリフトしているアイドル電流を安定させ、サーマル歪の発生を抑えるとともに、電圧増幅段と電力増幅段を明確に分離し、低負荷時のスピーカードライブ能力を高めています。
アルミ電解コンデンサーの陰極とアルミケースをより確実に接続した新開発シールデッド・キャパシターを採用しており、コンデンサー素子を強力にシールドしています。
これによりノイズの飛び込みやコンデンサー自身からのノイズの飛び出しがなくなり、高S/Nを実現しています。
Phonoイコライザー部は、レコードを聴かないときは自動的に回路がOFFとなり、不要なノイズ発生を防ぎ他のソースの音質向上に貢献します。
また、レコーディングセレクターにもON/OFF機能を持たせており、TONEダイレクトスイッチONにした時にだけ動作し、その後クロックは停止します。
Phonoイコライザーの回路にはハイブリットMCトランス方式を採用しています。
電磁歪の追放と振動の低減を図るため、リアパネル、ボトムプレート、トランスフレーム、スピーカーターミナル・ブロックシールドケースには銅メッキを採用しています。
OFC極性表示付極太電源コードを採用しています。
また、オーディオ用ヒューズや、アルミ無垢削りだしのロータリーノブ、金メッキ入出力端子、万力タイプの大型ターミナルなどの高品質パーツを投入しています。
機種の定格
型式 | D/Aコンバーター内蔵プリメインアンプ |
<アンプ部> | |
定格出力(両ch駆動、20Hz~20kHz) | 180W+180W(4Ω、0.005%) 150W+150W(6Ω、0.003%) 120W+120W(8Ω、0.003%) |
ダイナミックパワー | 400W+400W(2Ω) 280W+280W(4Ω) 160W+160W(8Ω) |
高調波歪率(20Hz~20kHz) | 0.003%(8Ω) |
入力感度/インピーダンス | Phono MM:2.5mV/50kΩ Phono MC:0.25mV/40Ω CD、Tuner、Line、Tape:150mV/50kΩ |
最大許容入力(1kHz、0.008%) | Phono MM:200mV Phono MC:20mV |
出力レベル/インピーダンス | Tape Rec、Rec Out:150mV/0.8kΩ |
周波数特性 | Phono MM:20Hz~20kHz ±0.2dB Phono MC:20Hz~20kHz ±0.3dB CD、Tuner:1Hz~200kHz +0 -3dB |
トーンコントロール(Volume -40dB) | Bass:100Hz、±8dB Treble:10kHz、±8dB |
サブソニックフィルター | 7Hz、6dB/oct |
ラウドネスコンター(Volume -40dB) | 100Hz:5dB、10kHz:3dB |
S/N比(IHF、Aネットワーク、ショートサーキット) | Phono MM:95dB(5mV時) Phono MC:83dB(0.5mV時) CD、Tuner、Line、DAT/Tape1、2:110dB |
<総合> | |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
ACアウトレット | 電源スイッチ連動:2系統(200W) 電源スイッチ非連動:1系統(100W) |
消費電力(電気用品取締法) | 365W |
外形寸法 | 幅457x高さ173x奥行475mm |
重量 | 29.3kg |