Pioneer A-717
¥79,800(1987年発売)
解説
デジタルソースに対応するため、アンプの原点である回路、コンストラクション、物性などファンダメンタルな視点からの見直しを図り、その集大成として開発されたプリメインアンプ。
このアンプの設計思想は、大きく分けて3つのポイントに集約されています。
第一に、信号経路を最短距離とするため、各信号ブロックを適正配置する。第二に徹底した防振・無共振化対策。そして、第三に低負荷時におけるスピーカーのドライブ能力の向上です。
これらについて様々な技術を投入することで、様々な問題を解決しています。
まず、信号経路を最短距離にするため、ダイレクト・コンストラクションと呼ばれる構造を採用しています。
これは、各回路ブロックをセパレート化し、入出力ブロックをシールド化する事で、内部での信号の劣化、信号間の干渉などの悪影響を未然に防いでいます。
入力ブロックでは、インプット&レコーディングセレクターおよびメインボリュームを機械的にリモートコントロールできる構造とし、信号経路の引き回しの最短化を達成しています。さらにインプットセレクターで選択された入力信号はソースダイレクトスイッチをONにすれば、フロントパネル側には信号は流れないため、一段とピュアなサウンドが楽しめます。
パワーアンプブロックは、信号の流れに沿ってレイアウトされ、パワー段の出力をストレートにスピーカーセレクターに導きます。ここでも、電源部からの距離を最短としています。
スピーカーセレクターブロックでも、リレーを取り付けた基板にスピーカー端子を直接取りつけ最短化を図っています。この結果、最短化されたスピーカー端子Aを優先し、A端子は下側に配置されています。
無振動・無共振化を徹底するため無共振化コンストラクションを採用しており、4種類のハニカム形状を採用し、トランス部やボリューム系もあわせてトータルに振動や共振を少なくしています。
パンチングによるハニカムをボトムプレートやボンネットケースに。パワートランジスタの振動・共振を効果的に抑えるために、アルミの押し出しハニカムヒートシンクに。外部振動を抑えるため、樹脂成形によるハニカムを大型ハニカムインシュレーターにそれぞれ採用しています。
また、トランスケースにはシールド効果が高く、高剛性で、内部損失が高く、振動減衰特性に優れ、共振周波数をほとんど持たない鋳鉄を採用しています。この鋳鉄ケースとトランス本体の間に熱伝導性のよいピッチ素材を充填するとともに、放熱ファンを設け、温度上昇によるトランス巻線の内部抵抗の増加を防止しています。
さらに、電磁誘導を起こしにくく、受けにくい大容量の新開発シールデッド・キャパシターを採用しています。
ボリュームの軸に荷重がかかったり、振動を起こすような構造では音質に悪影響を与えるため、ボリュームのロータリーノブの軸受けを中心として、両方向に重量バランスをとるという方法を採用し、ボリューム本体に機械的ストレスがかからないようにしています。また、アンプの振動の影響を最小に抑えるため、ボリューム基盤を支えているシールドカバーを特殊紙でボディ部分からフローティングし、音質に有害な2~4kHzの共振を吸収しています。
ノン・スイッチング・サーキットタイプIIIを採用しています。
この回路は、スイッチング歪みが原理的に発生しないタイプIIをさらにバージョンアップさせ、電源スイッチON直後や大信号入力時、外気温の変化などによって、ドリフトするアイドル電流を瞬時に安定させ、サーマル歪の発生を抑えることに成功しています。
また、パワー段の入出力信号の差の検出・補正を向上させ非直線歪を低減し、さらに電圧増幅段と電力増幅段を明確に分離し、電力増幅段はスピーカードライブに専念することで大出力時にも電圧増幅段に影響がなく、低負荷時のスピーカードライブ能力を向上しています。
アルミ電解コンデンサーの陰極とアルミケースをより確実に接続した新開発のシールデッド・キャパシターを採用しています。コンデンサー素子を強力にシールドすることにより、コンデンサー自身からのノイズの飛び出しが無くなり、高S/Nを実現しています。
Phonoイコライザーはレコードを聴かない時はOFFにすることができ、不要なノイズ発生を防いでいます。
また、レコーディングセレクターにもOFF機能を持たせており、シンプルな回路構成にすることで音の純度を高めています。
イコライザー部は、独自のNF-CR型回路を採用することで中・高域での動作を安定させるとともに、ローノイズHi-gm FETなどの採用により、S/Nを改善しています。
電磁歪対策と振動対策のためにリアパネル部やボトムプレート部などに銅メッキ部品を採用しています。
電源コードには極性表示付無酸素銅極太電源コードを採用しています。このコードは絶縁材に誘電率の低い素材を採用して電源コードのキャパシタンスを小さくすることで、外部雑音の影響を抑えています。
また、トランスの巻線の極性を管理して、コードを通じて入ってくるノイズも最小に抑えています。
オーディオ用ヒューズなど音質を重視したパーツを採用しています。
ロータリーノブなどにはアルミ無垢の削り出し品を採用しています。
機種の定格
型式 | ステレオプリメインアンプ |
実効出力 (両チャンネル駆動、20Hz~20kHz) |
100W+100W(0.003%、8Ω) 120W+120W(0.003%、6Ω) 150W+150W(0.005%、4Ω) |
ダンピングファクター(1kHz、8Ω) | 200 |
入力感度/インピーダンス | Phono MC:0.2mV/100Ω Phono MM:2.5mV/50kΩ CD、Tuner、Line、Tape:150mV/50kΩ |
Phono最大許容入力 (高調波歪率 0.008%、1kHz) |
Phono MC:19mV Phono MM:200mV |
出力レベル/インピーダンス | Tape Rec、ADPT Out:150mV/2.2kΩ |
周波数特性 | Phono MC:20Hz~20kHz ±0.3dB Phono MM:20Hz~20kHz ±0.2dB CD、Tuner、Line、Tape:1Hz~150kHz +0 -3dB |
トーンコントロール(-40dB) | Bass:±8dB(100Hz) Treble:±8dB(10kHz) |
サブソニックフィルター | 5Hz(12dB/oct) |
ラウドネスコンター(-40dB) | 100Hz/10kHz(5dB/3dB) |
S/N (IHFAネットワーク、ショートサーキット) |
Phono MC:71dB(0.25mV) Phono MM:89dB(2.5mV) CD、Tuner、Line、DAT/Tape1、Tape2:108dB |
スピーカー負荷インピーダンス | 4Ω~16Ω |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
ACアウトレット | 電源スイッチ連動:2系統(200W) 電源スイッチ非連動:1系統(100W) |
消費電力(電気用品取締法) | 270W |
外形寸法 | 幅420x高さ162x奥行435mm |
重量 | 19.6kg |