ONKYO Integra A-705DC
¥75,000(1977年頃)
解説
イコライザアンプとパワーアンプをDC化した2DC構成のプリメインアンプ。
イコライザアンプ部は、初段にローノイズFETによる差動増幅・段間カレントミラー回路、終段Aクラスプッシュプルを内容とする前3段増幅及び後2段差動増幅によるDC構成となっています。入力側及びNFループ内の大容量コンデンサを取り除くと共に、回路内のコンデンサには、全て無誘導フィルムコンデンサと良質のオーディオコンデンサを厳選して使用し、高い特性を得ています。
さらにRIAA補正には、A-708DCと同じNF・CR分割型回路を採用し、高域のスルーレートに起因する混変調を取り除いており、パルシブな信号にも、音くずれのしない純度の高い音質を得ています。
パワーアンプ部は、A-708DCと全く同じ2段カスケードドライブ、3段ダーリントン接続DC構成を採用しています。
DCアンプで最も重要な、スピーカー端子電圧の直流ドリフトには、初段差動アンプに特性の揃ったローノイズ・モノリシック・デュアルFETを使用し、安定したDCアンプを構成しています。
電源部には、全回路にわたってアースライン内の電位差を抑える、ブスアース(母線)方式を採用しています。また、100kHzの超高域までローインピーダンスを保持するESR(等価直列抵抗)0.01Ω以下の平滑コンデンサを採用し、さらに電源変動率0.1%以下、リップル排除比80dBという、プリ部専用の定電圧電源から、マルチスプレイブスラインによって、イコライザと各ブランチを直結する直結給電方式となっています。
これにより同一チャンネル内及び左右チャンネル間の相互干渉を防いでいます。
トーンコントロールアンプ部は、Bass/Treble共にターンオーバ周波数2段切換(ディフィート付)によって、より微細な周波数調整が可能となっています。
回路構成としては、差動1段オペアンプ構成のNF変化型を採用することで正確な変化特性を得ています。また、DC&DCの考え方を貫くため、コンデンサには全て無誘導フィルムコンデンサ及び低歪率オーディオコンデンサを使用しています。
万一、出力に直流電圧が表れた場合、左右独立の検出部が電子的に検出し、瞬時にスピーカーを切離して保護します。この回路は、電源投入時のクリックを抑えるトランジェントキラーを兼ねています。
スピーカー保護リレーには、金張り銀接点リレーを2接点パラで使用しており、接触抵抗に伴うダンピングの劣化を抑えています。また、入力セレクターは直接プリント基板に埋め込んでおり、シールド線の引き回しに起因する音質の劣化を防いでいます。
パワーアンプのバイアス電流値を安定に保つため、新開発のオートトラッキング・バイアス方式を採用しています。
これは、プリドライバー、ドライバー、出力段の3ポイントセンシングバイアス回路で、連続的な大振幅動作からピアニッシモ再生へと移った場合の、ドライバーとパワートランジスタの温度差に起因するバイアス変動を防止し、安定した低歪率駆動を可能にしています。
パワー部の低域カットオフを、DCと0.1Hzに切換え可能な、2段切換えローフィルタを搭載しています。
DCではパワー部の信号系及びNFに一切コンデンサを含まないDCアンプとして動作し、0.1Hzポジションではカットオフ0.1HzのACパワーアンプとして直流リークのある他のプリアンプなどと接続できます。
パワーアンプのゲイン3段切換え機能を搭載しており、ゲインが0dB、-10dB、-20dBの3段階にわたって切換えできます。
小音量で使用する場合に、パワー部のゲインを下げて使用することで、その分実用上のS/Nが改善できます。
Phono入力端子には金メッキ処理が施されています。
ボリュームには、ガッチリしたダイキャストボディに封入された、マルチ摺動子を持つ低歪率アッテネーターを搭載しています。
連続可変方式でトリミングレスなため、電流集中作用による歪もなく、連動誤差は70dBまで0.5dB以内となっています。
機種の定格
型式 | プリメインアンプ |
<パワーアンプ部> | |
定格出力(20Hz~20kHz、両ch駆動) | 70W+70W(8Ω) |
ダイナミックパワー(1kHz、8Ω) | 100W+100W |
全高調波歪率(20Hz~20kHz) | 0.02%以下(定格出力時) 0.01%以下(定格1/2出力時) 0.008%以下(1W出力時) |
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1) | 0.001%以下(定格出力時) |
パワーバンドウィズス(IHF-3dB、THD0.2%) | 5Hz(測定限界)~100kHz |
周波数特性 | DC~250kHz +0 -1.5dB |
フィルタ | 0.1Hz、6dB/oct |
アッテネーター | -10dB/-20dB |
S/N(IHF-A、入力ショート) | 115dB以上 |
ダンピングファクター(1kHz、8Ω) | 90 |
入力感度/インピーダンス | Main in:1.5V/100kΩ |
負荷インピーダンス | 4Ω~16Ω |
利得 | 24.6dB |
入出力極性 | 同相 |
トランジェントキラー動作時間 | Power on後:6秒 Power off後:0.2秒 |
出力端子 | SP-A、B、A+B、ヘッドホン |
<プリアンプ部> | |
入力感度/インピーダンス | Phono1、2 MM:2.5mV/47kΩ Tuner、Aux、Tape play1、2:150mV/50kΩ |
全高調波歪率(Phono→Pre out) | 0.005%以下(6V出力時、20Hz~20kHz) |
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1) | 0.007%以下(1.5V出力時) |
周波数特性 | Phono(RIAA偏差):20Hz~20kHz ±0.2dB Tuner、Aux、Tape play1、2:5Hz~100kHz +0 -1.5dB |
Phono最大許容入力(RMS、THD0.05%) | MM:280mV(1kHz) 1370mV(10kHz) |
S/N比(IHF、Aネットワーク) | Phono1、2 MM:82dB以上 Tuner、Aux、Tape play1、2:100dB以上 |
出力電圧 | Pre out(100kΩ負荷時):1.5V(定格)、14V(最大) Tape rec1、2:150mV(定格) |
出力インピーダンス | Pre out:2.2kΩ Tape rec1、2(Phono):3.4kΩ |
トーンコントロール(2dBステップ式) | Bass:±10dB(100Hz、ターンオーバー400Hz) Treble:±10dB(10kHz、ターンオーバー2kHz) |
ターンオーバー周波数 | Bass:400Hz、125Hz、defeat Treble:2kHz、8kHz、defeat |
ラウドネス | +6dB(100Hz) |
フィルター | EQ subsonic:15Hz、6dB/oct High cut:7kHz、6dB/oct |
ミューティング | -20dB |
入出力極性 | イコライザアンプ:同相 トーンアンプ:同相 |
<その他> | |
使用半導体数 | トランジスタ:56個 FET:8個 ダイオード:26個 |
AC出力 | switched:2系統、合計200W unswitched:1系統、200W |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 185W(電気用品取締法) 500W(最大消費電力) |
外形寸法 | 幅438x高さ150x奥行390mm |
重量 | 14kg |