NEC A-10TypeIII
¥118,000(1986年3月21日発売)
解説
A-10TypeIIをベースに、さらに強固な剛構造化するとともにリザーブ電源方式などにも改良が施されたプリメインアンプ。
構造には独自のメカニカル・グラウンド・コンストラクションを採用しています。
これは、1つ1つの部品の振動を徹底的に押える素材と構造として、その上でコンピューターシミュレーションによって振動モードの異なる1つ1つの部品の振動を全体構造の中でキャンセルしあうようにしたもので、この単純化された振動を巨大な脚に落として大地に繋いで抑え込んでいます。
A-10TypeIIIではさらに強化・リファインがされており、セット自体の機会的基準点を本体の脚として、全ての機械的振動を脚で受け止める構造とし、底板の4ヶ所に配置されたインシュレーターには直径50mm、高さ22mmの焼結合金脚を採用しています。
また、構造部品および電源トランスを確実に脚に接続するために、厚さ3.2mm鉄板を底板に採用しています。
さらに、左右のサイド金具、リアパネル、ヒートシンクを一体構造化するクロスビームを採用しており、底辺とクロスビームを4個のビームで接続し、そのビームに電源トランスのコアを確実に固定しています。
また、フィンの鳴きを防止するため、チムニータイプヒートシンクを採用しています。
この剛構造により、本体と大地をしっかり接地させることにより接地面の素材や構造とアンプの相対関係に基づく音の濁りや曇りを排除しています。
なお、インシュレーターは通常の4脚接地以外にも、後方2脚+前方1脚、後方1脚+前方2脚がセレクトできます。
"増幅度を持った一本の針金"というアンプの理想像に迫るため、Simple
& Straight思想を採用しており、必要に応じて付属回路などの全てをジャンプしてしまう1接点直結で純粋なクオリティを実現しています。
CDなどのデジタルソースの優れたダイナミックレンジとハイクオリティを味わうためパワーアンプ部へのダイレクト入力を搭載しています。
A-10TypeIIIでは新たにPhono系のクオリティ向上を再吟味しており、EQアンプのDCサーボ化を計るとともに、Phonoアンプとパワーアンプを高信頼リレーの使用で1接点直結としてしまうPhono
Direct Positionを搭載しています。
再生中のソースに関わらず、好みのソースを録音できるRECセレクター方式を採用しています。
また、極太スピーカーコードを確実に接続できるようにするため、大型万力タイプのネジターミナルを採用してます。また、これによりスピーカーターミナル部を支えるリアパネルを非磁性体素材にすることが可能となり、スピーカー出力電流のループから磁性体を追放することで、電気的外乱から解放されています。
ACアウトレットに、ノイズの混入や飛びつきを防ぐラインフィルターを搭載しています。
このACアウトレットはアンスイッチドで動作し、極性表示もあります。
市販されているCDソフトに記録されている信号は正極性と逆極性が混在しています。
A-10TypeIIIではシステムトータルでの極性管理をするため、逆極性のソフトのために極性反転Pre
Out端子を搭載しています。
逆極性Pre OutとMain Inとを付属のU字ピンで接続しておくことで、オペレーションSWのセパレート・ポジションで極性を反転でき、これによってトータルの極性合わせが可能となります。
電源部には巨大リザーブ電源方式を採用しています。
コンデンサの放電時にも大出力を維持するため、コンデンサインプット型整流回路の充電電流の流れない時間を補うもう一つの電源を用意して、その出力の位相を90゜遅らせる事でメイン電源のリップルの谷を埋めて等価的にバッテリー的な電源としています。
さらにA-10TypeIIIでは、電源トランスの電流容量、平滑コンデンサの容量などが従来より約20%増強されており、電源インピーダンスも一段と低下しており、より優れた電源となっています。
全増幅段にプッシュプル型増幅回路を採用するとともに、最終増幅段にはNECの半導体技術を生かしたスーパーリニアリティの2SA-1227と2SC-2987をパラレルプッシュプル構成で使用しています。
出力電流回路に直列に入るエミッター抵抗の実質的な半減を、出力トランジスタをパラレル使用することで安定度を損なわずに回避しています。
また、2Ω負荷でもASOリミッターによる保護が不要な出力回路を設計し、2Ω負荷でも出力電流のリニアリティを損なうリミッターが作動しません。
機種の定格
型式 | ハイクオリティインテグレーテッドアンプ |
<パワーアンプ部> | |
回路方式 | 全段ダイレクトDCサーボ回路 |
実効出力(両ch駆動、 正弦波入力、20Hz~20kHz) |
120W+120W(4Ω) 60W+60W(8Ω) |
全高調波歪率(実効出力時) | 0.004%以下 |
混変調歪率(実効出力時) | 0.004%以下 |
周波数特性 | 5Hz~300kHz |
入力感度/インピーダンス | 1.23V/20kΩ |
<プリアンプ部> | |
回路方式 | High Gm FETダイレクト入力DCサーボEQアンプ回路 |
入力感度/インピーダンス | Phono MM:2.5mV/47kΩ CD、Tuner、AUX、Tape1、2:150mV/20kΩ |
出力レベル/インピーダンス | Rec出力:150mV プリアンプ出力:1.23V/600Ω |
SN比 | Phono:90dB(-142dBV) CD、Tuner、AUX、Tape1、2:110dB(-126dBV) |
RIAA偏差 | ±0.2dB以内 |
Phono最大許容入力 | 150mV |
サブソニックフィルター | 15Hz:-3dB、6dB/oct フォノイコライザーに組込み (Phono Direct時はノンフィルター) |
入出力位相 | 同相 但しプリアウトのみ正極性、逆極性の両出力あり |
<総合> | |
回路方式 | シャントレギュレータ方式+リザーブ電源 |
消費電力 | 230W |
外形寸法 | 幅430x高さ165x奥行き485mm |
重量 | 25kg |