オーディオの足跡

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630の画像
 解説 

FMチューナーとコントロールアンプの機能を一体化した600シリーズのFMチューナープリアンプ。

アンプ部

630のプリアンプ部は610の回路と性能をほぼそのまま継承した構成となっています。

基本的な回路構成にはトリプルトランジスタサーキットを採用しています。
この回路はトランジスタのベース入力抵抗hieが発生する熱雑音enの問題に着目したものです。実際の回路では信号源インピーダンスRsが直列にhieに加算されます。この場合hieよりRsの値が大きく、したがってRsによって生まれる熱雑音の方が大きいことが多いため、enは無視されがちでした。しかし、MC型カートリッジなどのようにRsが非常に小さい場合にはhieがSN比に及ぼす影響は大きくなります。
これを改善するためトリプルトランジスタサーキットを採用しており、hieを3分の1に抑え、enを√3分の1に低減しています。さらに、電流性雑音inの少ないトランジスタを採用することでSN比を約10dB改善しています。

初段と2段目はともにエミッタ接地増幅となっており、出力段はコンプリメンタリーA級プッシュプル回路を採用しています。通常プリアンプにはNF回路を構成しやすいため差動アンプの採用が多いですが、差動トランジスタの内部抵抗による小音量時の非直線歪の発生や、ノイズの上積みを避けるため、全てバッファーアンプを使用しています。
差動アンプではNFループ外の差動用トランジスタが内部抵抗Riを持ちます。このRiはレベルによって変化するもので、小音量時にNFループ内の抵抗に比べてRiが大きな値になると非直線歪が発生してしまいます。630の回路では差動用トランジスタが除かれていると考えることができ、Riがゼロとなるため、レベル変化に再生音が影響を受けることがありません。

高出力ヘッドホンアンプを搭載しています。
ヘッドホンジャックに挿入すると、自動的にプリアウト出力がカットされます。

要所要所にトランジスタよりも高価な金属皮膜抵抗、高精度コンデンサーを多用しています。また、プリント基板は全てエポキシ系プラスチックとしています。
またパーツレイアウトも10数年前から積み重ねてきた経験を生かし、フラックスの影響が極めて少ないものになっています。

フォノ入力感度の切換スイッチを搭載しており、3段階の切換が行えるためカートリッジの出力に合わせる事ができます。
インピーダンスは100kΩコンスタントでMC型カートリッジのダイレクト接続も可能となっています。

2系統のテープモニターとダビングスイッチを搭載しています。

ラウドネス機能としてコンテュアーボリュームを搭載しています。
この回路は一般的なものと異なり、ボリュームを絞るにつれて自動的に周波数バランスの補償量が可変します。


FMチューナー部

IF段には選択度の2段切換を採用しており、受信状態に応じて切換ることができます。
ノーマルポジションでは都合12素子のLCフィルターを使用していますが、6素子をワンパック化することによって歪率低下を実効的にフィルター2段分に抑えています。
また、ナローバンドにおいても、スプリアス特性の優れた4素子のセラミックフィルターをワンウエハー1素子とし、LCリニアフェイズフィルター2段と組み合わせて3段構成としています。たそしワンパックとすることで熱特性や素子の特性差、外乱に対する影響を相互キャンセルさせるIC的発送に基づくものとなっています。

フロントエンド部にはFM専用として開発された周波数直線型5連バリコンを採用しています。これにより多段同調によって選択特性を向上させるとともに、トリプルチューン構成とすることで利得偏差の発生を抑えています。
またRF増幅にはローノイズデュアルゲートMOS-FETを使用しています。低歪のため高次高調波の発生が抑えられ、混変調妨害や相互変調妨害などの排除能力が優れています。また、低雑音素子のため実用感度も充分な値を得ています。

フロントエンドパーツを金属板に最短距離でグランドすることによって局部発振周波数の漏洩をはじめ種々の干渉の発生を防止しています。また、金属板はプリント基板に比べて数倍温度係数が良いため、各種のドリフトを防いでいます。
また、フロントエンドやRF段、IF段はそれぞれ厚さ1mmの錫メッキ鉄板で完全にシールドし、クリップによるビート障害などによるスプリアス発生を抑えています。

同調方式にはデジタルチューニング方式を採用しています。
同調ダイヤル上部のチューニングインジケーターのうち、左のランプが点灯すれば同調点が右にズレており、右のランプが点灯すれば同調点が左にズレていることを指示します。中心のランプが点灯すれば正確な同調点となります。
さらにこのランプは電波の入力レベルのインジケーターも兼ねており、約30dBf(17μV300Ω)で点灯します。また、シグナルインジケーターは電波の入力レベルの強弱を示すもので約55dBf(300μV300Ω)で動作し、これが点灯すればS/Nと歪率が保証されます。
この同調操作時には選択度25kHzというシャープなレンジで点灯レベルを狭め、いったん同調すると50kHz幅にレンジを拡げ、わずかな同調ドリフトを吸収し、音質の向上を図っています。

MPX部にはPLL回路を採用しています。
これにより、熱や湿度の影響によってチューナー内部で創りだされるMPX信号に対する位相ズレを検出し、常に同位相となるよう補正することで安定したセパレーションを得ています。

ミューティング機構を搭載しており、選局時の局間ノイズを排除しています。
ミューティングはチューニングインジケーターロジックと連動しており、中央の赤が点灯した時に解除されます。

19kHzのパイロット信号をカットするMPXフィルターを搭載しています。
従来のフィルターでは15kHz付近の可聴帯域成分までカットしてしまう傾向にあり、音質低下が問題となっていました。そこで630では独特な減衰カーブを持つフィルターを考案、採用しており、18kHzから急激に減衰するカーブを得ています。
19kHz時では減衰量は-70dBで歪は0.03%以下となっており、FM放送波本来の周波数特性への影響を抑えています。

ドルビーFM放送への対応を図るため、ドルビーFMデコード回路を搭載しています。



別売りオプションとして600シリーズ専用ラックがありました。
このラックは600シリーズ専用に設計されており、好みの構成をマウントして使用できます。

機種の定格
型式 FMチューナーコントロールアンプ
<プリアンプ部>
入力感度/インピーダンス Phono:1mV、2mV、5mV/100kΩ
Aux、Tape mon1/2:100mV/50kΩ
最大入力レベル Phono:250mV(1kHz、感度切換スイッチ5mV時)
出力レベル/インピーダンス/負荷インピーダンス Pre out:1V/500Ω/10kΩ
Rec out:100mV/1kΩ/50kΩ
Headphone:40mV/4.5Ω/8Ω
最大出力 Pre out:5V/50kΩ
Rec out:4V/50kΩ
Headphone:300mW/8Ω
周波数特性 Phono(RIAA偏差):30Hz~15kHz ±0.3dB
Aux、Tape mon1/2:20Hz~50kHz +0 -1.5dB
S/N比(IHF-Aネットワーク)/入力換算比 Phono:80dB以上/-140dB(感度切換スイッチ1mV時)
Aux、Tape mon:102dB以上/-122dB
残留ノイズレベル(IHF-Aネットワーク) Pre out:4μV以下(Vol.min)
Headphone:8μV以下(8Ω)
歪率(Vol.max、output2V) Phono:0.003%以下(10kHz以下)
Aux、Tape mon:0.004%以下(10kHz以下)
トーンコントロール Bass:±9dB(20Hz)
Treble:±9dB(20kHz)
コンテュアー(Vol."8") -30dB(3kHz)
-15dB(20Hz)
-24dB(20kHz)
<チューナー部>
受信周波数 76MHz~90MHz
実用感度 3μV(12.5dBf) 300Ω
歪率(1kHz、100%変調時)
Normal mono:
stereo:
Narrow mono:
stereo:
0.05%以下
0.08%以下
0.15%以下
0.5%以下
S/N比(IHF) Dolby NR system out
 mono:70dB以上
 stereo:68dB以上
Dolby NR system in
 mono:75dB以上
 stereo:73dB以上
周波数特性 50Hz~15kHz +0.3 -1.5dB
実効選択度(IHF) Normal:40dB以上
Narrow:80dB以上
ステレオセパレーション
Normal:

Narrow:
50dB以上(1kHz)
35dB以上(10kHz)
30dB以上(1kHz)
30dB以上(10kHz)
キャプチャーレシオ(IHF) 1dB(Normal)
イメージ妨害比 100dB以上(82MHz)
IF妨害比 100dB以上
スプリアス妨害比 100dB以上
SCAサプレッション 75dB
AMサプレッション 60dB
MPXフィルター 19kHz、-70dB
アンテナ端子 300Ωバランス
75Ωアンバランス
チューナーアウト 0.1V(50%変調時)
<総合>
電源電圧 AC100V、50Hz/60Hz
消費電力 20VA
外形寸法 幅400x高さ170x奥行237mm
重量 約7kg
別売 600シリーズ組込ラック SYSTEM-ONE(¥25,000)