LUXMAN MS-20
¥56,000(1台、1979年9月発売)
解説
MS-10をベースに、マルチウーファー方式を採用することで低音域の拡張を図ったスピーカーシステム。
マルチウーファー方式は、小口径ウーファーをパラレル駆動することで低音域における音圧レベルを上げ、迫力感を持たせるために用いられていました。しかし、この手法ではユニット間の干渉による問題が生じ、ウーファーの高域部分での周波数特性のあばれや位相歪による音像定位の悪化、混変調歪などが発生していました。
この問題を解決するため、MS-20では、ウーファーの高域部分での周波数特性のあばれと混変調歪によるクリアさの阻害については、2個の中低域ユニットの相互干渉を防止するため、エンクロージャーの中に仕切り板を入れて独立した空間を設け、それぞれの容積比率を3対2に設定しています。これによりメインとサブのウーファーのfo(最低共振周波数)やQo(最低共振点の山の高さ)を変えています。
また、位相歪による音像定位の悪化については、2個のウーファーの受持ち帯域や減衰特性など、その動作のさせ方に配慮がされています。特にネットワークについては、様々な角度から検討が加えられ、受持ち帯域や減衰特性を決定し、定位感の問題を解決しています。このため、メイン用ウーファーは45Hz~3kHzの間をカバーし、サブ用ウーファーは最大点(250Hz)でメイン用の音圧レベルよりも6dB低くなるように設定し、特殊フィルターによって-3dB/oct.の傾斜で除々に減衰しながら3kHzまで受持たせています。また、音像定位の基本となるべき50Hz~500Hzの帯域をクリアに再生するため、メイン用、サブ用がそれぞれ独立したマルチ・ネットワークを微調整しています。
中・低域にはMS-10にも採用された20cmコーン型ウーファー C-2038Kを採用しています。
このユニットは、振動板に2種以上の複合材質からなるアラミド繊維系プラスチック・コーンを採用しており、軽量かつ剛性を高め、さらに素材固有の響きを抑えています。
高域にはMS-10にも採用された2.5cmドーム型トゥイーター D-2501Fを採用しています。
振動板はポリエステル・フィルムをベースに作り上げた25mm口径のセミ・ハードドーム型で指向特性に優れています。また、中・低域ユニットとのつながりを重視し、同質のプラスチック系素材を採用しています。
ネットワークには低歪率のコア材を用いたコイルや中高域特性の優れたフィルム型コンデンサーなどを採用するとともに、リード挿入型のスピーカーケーブルを採用しています。
また、ネットワークの部品レイアウトについても、各パーツ間の相互干渉を避けるため、コイル間の距離を十分にとり、音質向上を計っています。
エンクロージャーにはマルチ・ベント・チューニング方式を採用しています。
この方式は、密閉型のエンクロージャー(キャビネット)を基本に、箱の後面に複数個の小さな孔をあけ、箱の中の空気圧を最適な状態に減らす構造となっています。
これによりコーンに対するプレッシャーのかかりすぎが無くなり、優れたトランジェント特性を実現しています。
機種の定格
方式 | 2ウェイ・3スピーカー・マルチベントチューニング方式・ ブックシェルフ型 |
ユニット | 中低域用:20cmコーン型x2 高域用:2.5cmドーム型 |
周波数特性 | 45Hz~20kHz |
最大入力 | 80W |
定格入力 | 35W |
出力音圧レベル | 90dB/W/m |
インピーダンス | 6Ω |
クロスオーバー周波数 | 3kHz |
外形寸法 | 幅320x高さ636x奥行300mm |
重量 | 19.5kg |