解説　

MM/MC独立構成を採用したフォノイコライザー。

アナログプレイヤーとの伝送距離を最小に抑えるため、プレイヤー近傍に接地できるコンパクト設計が採用されています。

E-03は左右チャンネルだけでなく、MM/MC専用に独立したアンプを持つ4アンプ構成を採用しており、内部インピーダンス2Ωのオルトフォンタイプや40Ωデンオンタイプをはじめ、その周辺のインピーダンス値をもつ全てのカートリッジに対応しています。

MM用アンプの回路構成は、初段にハイGmのデュアルFETをチャンネルあたり2個パラレルで用いた差動増幅回路で構成しています。そして、2段目はP型接続のローノイズ・デュアル・トランジスタ、電流増幅段は利得の高いエミッターフォロワー接続としています。
また、MC用アンプの回路構成は、初段差動回路にハイGmデュアルFETをチャンネルあたり4個パラレル接続し、次段のPチャンネルトランジスタで差動を受け、カレントミラー回路を組み合わせて高利得を確保しています。そして、最終段のエミッタフォロワ回路は電流増幅率の高い2段ダーリントン接続としています。
MM用・MC用の両回路は使用する素子を同じ品種で統一しており音色の整合を図っています。

回路がシンプルに構成でき、S/Nの面でも有利なNF型イコライザーを採用しています。
NF型イコライザーでは補正周波数特性の高域上昇の問題がありますが、E-03ではコンピューターシミュレーションを駆使した定数決定によってこの問題を解決し、極めてフラットなRIAAカーブを実現しています。
さらに、帰還回路部にはラックスのオリジナル回路として評価の高いAC/DC別帰還のデュオベータ回路を採用しています。また、E-03専用に新開発した高精度・高音質パーツをふんだんに採用することで優れたRIAA偏差を実現しています。

ピュアな信号伝送を実現するため、MM/MC用イコライザーの切替は入力段でなく出力段でアース側まで切替える方式としています。これにより微弱なカートリッジからの信号がセレクタースイッチを経由せずにイコライザー回路へ入力されています。
また、アンプへの送り出し信号を選択するスイッチは、選択されていない回路側の入力をリレーでショートしており、クロストーク性能についても吟味が加えられています。さらに、入力にショートリレーを入れることによって電源投入時にオフセット電圧がカートリッジに及ぼす悪影響を防止し、消磁効果も実現しています。

電源部に採用されたトランスは設計段階から厳重な漏洩フラックス対策が徹底されており、磁束密度を9,000ガウスに設定し、漏洩フラックスの発生量そのものを抑制しています。そして、EIトランスのコアに銅シールドを施し、さらにトランス全体をケースに納める2重シールド構造としています。このトランスの取付はメカニカル・フローティング・マウント方式となっており、振動にも配慮がされています。
また、トランスの2次巻線をMM/MC/コントロール回路の3系統に独立させた3巻線となっており、整流後には左右チャンネル毎にレギュレーター回路を配備することで電源を介してのアンプ間・チャンネル間の相互干渉を排除しています。

内部コンストラクションにはノン・インターフェアランス・コンストラクションを採用しており、それぞれの回路をシャーシ・センター部から完全に分離することで相互干渉を抑制しています。さらに、信号増幅回路と電源回路を最短距離に配しながら双方を遮蔽板でセパレートしています。
また、L/RとMM/MCの4アンプの各々に独立して最適な定電圧電源を配置しています。

信号ケーブルには2芯シールドケーブルを採用しており、伝送ラインで混入しがちなノイズの遮断を図っています。

E-03はリレーコントロールなどのアクセサリー回路に至るまで全ての回路をオールディスクリート構成としており、IC固有の色づけを排除しています。

カスタムメイドの高音質パーツを採用しており、ガラスエポキシ製サーキットボードや銅ケース入りスチロールコンデンサーなどを採用しています。

機種の定格

型式	フォノアンプ
入力	MM/MC独立NF型イコライザー
入力感度	MM:4mV MC:0.2mV
適合カートリッジインピーダンス	MM:10kΩ以下 MC:40Ω以下
入力インピーダンス	MM:50kΩ MC:200Ω
利得(1kHz)	MM:36dB MC:62dB
リアカーブ偏差	30Hz～20kHz ±0.2dB 20Hz～100kHz ±0.5dB
出力電圧	250mV(1kHz)
出力インピーダンス	200Ω
S/N比(IHF-A)	MM:103dB MC:83dB
チャンネルセパレーション	90dB以上(10kHz)
消費電力	11W
外形寸法	幅126x高さ183x奥行421mm
重量	6.8kg