解説　

POA-3000とPRA-2000の技術を投入して開発されたプリメインアンプ。

信号系の短縮化を図るため、イコライザーアンプとパワーアンプの2アンプ構成を採用しています。そのためトーン回路はパワーステージ前段のサーボ回路に不可する構造となっています。
さらに、ダイレクトDCサーボ回路により、MC入力→SP出力に至る全信号経路から全てのコンデンサーを除去し、完全DC構成を実現しています。

全段コンデンサーレス構成を実現したダイレクトDCサーボ回路をイコライザーアンプ部とパワーアンプ部に採用しています。
ダイレクトDCサーボ方式では、微細に潜在するDCドリフトをシャットアウトすることで超低域の安定性を確保しています。さらに、この回路は初段FET差動アンプのパラレル接続とサーボ素子だけの極めてシンプルな構成であるため、サーボ回路による特性劣化が起きません。

イコライザーアンプ部にはDCリニアアンプ2段による無帰還型リアルタイム・イコライザーを搭載しています。
この回路は、新開発のローノイズ・デュアルFETによるDCリニアアンプ2段と断簡のCR型イコライジング・フィルターで構成されています。初段はダイレクトDCサーボ方式のデュアルFETパラレル差動増幅とし、S/Nや歪率を改善しながらDC温度ドリフトを根本的に解消しています。また、高域特性も改善し、さらに潜在する歪やノイズを低減するため、新開発カスコード差動ブートストラップとデュアル・トランジスタのカレントミラー回路を併用しています。また、次段の電圧増幅段では、ダーリントン・ローカル・フィードバック回路でA級プッシュプルとして歪の発生を大幅に抑え、SEPP出力段であるCR型イコライジング・フィルターをローインピーダンスでドライブしています。そして、CR型イコライジング・フィルターは徹底したローインピーダンスタイプにし、無帰還型リアルタイム・イコライザー方式をとることで優れたSN比を獲得しています。さらに、CR素子にはコンピューターで厳選した高精密素子を採用しています。
イコライジング・フィルターからの信号が送られる後段アンプは、前段アンプと同様のハイグレードな回路構成とするとともに、前段アンプには±60V、後段アンプには±32Vをそれぞれ独立した安定化電源から供給し、さらにPc300mW・fT100MHzの高出力・高速・高耐圧トランジスタを使用するｋとおで、クリッピングレベル18Vの高出力・広ダイナミックレンジを実現しています。

イコライザーアンプ部は最初からMCカートリッジに焦点を合わせたハイゲイン型のイコライザーとしており、MCカートリッジの実力を引き出しています。

パワーアンプ部には、パワーアンプPOA-3000で採用されたリアルバイアスサーキットの回路技術を採用しており、A級動作でハイパワーを実現しています。
リアルバイアスサーキットは、固定バイアスの設定と安定制御、信号の大きさに応じたハイスピード・バイアスの供給、よきできない信号の変化に応答するピークホールド・リセット動作の3つの役割を持っています。回路の動作は、まず入力信号を高速で検波し、これを基にFET差動のバイアス平衡ドライブ回路でA級動作を維持するのに必要なバイアス量を供給しています。この際、パワートランジスタが発熱してもバイアス電流は変動しないように安定に制御されるため、常にベストコンディションに保たれます。また、信号電流よりもバイアス電流を速く立ち上がらせ、時間遅れによるカットオフを解消するため、無信号時においても若干の固定バイアス電流を流しています。これにより、立ち上がりの速い高い周波数の音楽信号が入ってもバイアスは先行して立ち上がり、確実なA級動作を実現しています。
出力トランジスタには特に高域特性に優れた新開発の高速パワートランジスタ(fT:100MHz、Pc:120W)をチャンネル当り片側2個並列のプッシュプル接続し、高出力時のhFEのリニアリティを向上させています。

パワーアンプ部のバッファアンプには「初段ローノイズFETパラレル差動カスコードブートストラップ・ダイレクトDCサーボ+差動カレントミラー平衡ドライブ+ピュアコンプリメンタリープッシュプル」という回路構成を採用しています。また、プリドライバー段には「差動3段カレントミラー出力」を採用しています。これによりA級パワー段をローインピーダンスでドライブしています。

電源部には大型トロイダルトランス(7.6kg、145mmφx高さ121mm)と66,000μF大容量ブロックコンデンサー(63.5mmφx高さ120mm)を採用しています。
まず、A級パワーアンプの電圧増幅部には±23Vの安定化電源から供給し、パワー部は±60Vを別巻線から供給しています。さらにイコライザーアンプにも別巻線からそれぞれ独立した安定化電源を通し、2つのDCリニアアンプに±60Vと±32Vを供給しています。
また、大型トロイダルトランスは厳重な多重シールドによりリーケージフラックスを抑えています。

電源スイッチON時のミューティング動作を兼ねたプロテクション回路を搭載しています。
また、DC出力によるスピーカーの破損防止のDC保護回路、放熱器の異常温度上昇によるトランジスタの破損を防ぐ温度保護回路を搭載しています。

トーンコントロールには、信号経路から有害なコンデンサを除去した新開発リアルタイム・トーンコントロールを採用しています。

回路間の相互干渉を防ぐため、内容積の約1/3を閉める電源部と信号増幅系をシールド処理で遮断しています。
さらに、全ての入出力端子は、最短のプリント基板に直結し、各種のモード切換えは前面パネルのツマミ類によってコントロールされるリモートスイッチによって動作させています。これによりワイヤーの引き回しを最小限に抑えています。

サイドウッドはブラジリアン・ローズウッド調の鏡面木目仕上げとなっています。また、フロントパネルはシャンペン・ゴールドのハードアルマイト仕上げとなっています。

ダイレクトポジション付きヘッドホン端子を搭載しています。
High/Lowのインピーダンス切換えに加えDirectも搭載しており、一般の抵抗分割式とは異なり、出力段と直結して低出力インピーダンス駆動が可能です。

サブソニックフィルターやラウドネスコントロール、ミューティングを搭載しています。

インプットセレクターにはLED表示を採用しています。

機種の定格

型式	プリメインアンプ
<パワーアンプ部(Tuner in - SP out)>
回路方式	ダイレクトDCサーボ方式DENON class A回路
定格出力(両ch駆動、正弦波連続出力)	100W+100W(8Ω、20Hz～20kHz) 80W+80W(4Ω、1kHz)
入力感度/インピーダンス	150mV/40kΩ
全高調波歪率	0.003%(20Hz～20kHz)
混変調歪率(60Hz:7kHz＝4:1)	0.005%以下(定格出力相当振幅出力時)
出力帯域幅(IHF、両ch駆動)	5Hz～100kHz(THD 0.02%)
周波数特性	1Hz～400kHz +0 -3dB(1W出力時)
SN比(IHF-A)	108dB
出力インピーダンス	0.08Ω以下
スルーレイト	250V/μs
ライズタイム	0.6μs
出力端子	Speaker AorB:4Ω～16Ω、A+B:8Ω～16Ω 　(インピーダンス切換えスイッチ付き) Headphone:ステレオヘッドホン 　(インピーダンス切換可能:Low/High/Direct)
<プリアンプ部(イコライザーアンプ)>
入力感度/インピーダンス	Phono1/2 MM:2.5mV/50kΩ Phono1 MC:200μV/100Ω Tuner、Aux、Tape1/2:150mV/40kΩ
最大出力/定格出力	18V/150mV
Phono最大許容入力(1kHz)	MM:300mV MC:23mV
RIAA偏差	MM/MC:20Hz～100kHz ±0.2dB
全高調波歪率	0.001%(1kHz、出力10V時)
<総合特性>
SN比(IHF-A、入力短絡)	Phono1/2 MM:90dB Phono1 MC:75dB(250μV入力時) Tuner、Aux、Tape:108dB
トーンコントロール	Bass:±8dB(100Hz) Treble:±8dB(10kHz)
サブソニックフィルター	18Hz、6dB/oct
ラウドネスコントロール	低域:+7dB(100Hz) 高域:+6dB(10kHz)
ミューティング	-20dB
<その他>
電源	AC100V、50Hz/60Hz
消費電力(電気用品取締法)	305W
外形寸法(ツマミ、ゴム脚、端子含む)	幅506x高さ168x奥行451mm
重量	23kg