オーディオの足跡

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808の画像
 解説 

ナカミチとB&Wが共同開発したプロフェッショナルスタジオモニタースピーカー。

808は、ナカミチ社長の中道仁郎が昭和56年10月にB&W社長のジョン・バウアーズに共同開発を申し入れて開発が始まりました。以後、ナカミチ側が提示した仕様書をもとに2人の度重なる技術折衝とバウアーズ氏による試聴室でのヒアリング調整が続けられ、3年の歳月をかけて開発されました。

ナカミチが提示した仕様書には具体的に3点の事が書かれていました。
まず、フラットな周波数特性で801Fと同様にカラーレーションを排し、超低歪率とする事。次に801Fの2倍の能率として、1W入力で91dBを得ること。最後にリスニングルームで得られる最大音圧が120dBのオーダーであること(ピークでは125dBを得ること)の3点です。
これらの仕様要求の背景には、今後デジタル録音のモニタリング能力がプロモニタースピーカーの必須条件となり、またクラシックだけでなくあらゆる音楽ソースに対応する必要があるとの判断がありました。
この仕様を実現するため、B&Wのプロジェクトチームは高い音圧レベルでも低歪のドライバーユニットの設計・製造からスタートし、ナカミチ側はそのトータルインテグレーションに関してアドバイスを行いました。その成果は中高域用エンクロージャーのQuarter-wave Transmission Lineシステムや、エンクロージャーの形状、音づくりなどに反映されています。さらに、レーザーインターフェロメーターによる振動解析や数値最適化技報を用いたコンピューターによるクロスオーバーネットワークの採用など、B&Wが誇るノウハウが総動員されています。

低域には30cmコーン型ウーファーであるBT-300を搭載しています。
このユニットは801Fのユニットをベースに開発された300mm口径のものをパラレル駆動としています。
ボイスコイルには耐熱性に優れたカプトンボビンを採用しています。また、コーン素材にはBextrene(ベクストレン)を用いており、ダンプ材としてPVA(ポリビニルアルコール)をコーティングしています。
マグネットはウーファー2本の合計で9kgに達します。

中域には10cmコーン型ミッドレンジであるMT-100を2個搭載しています。
コーン素材には過渡特性やリニアリティに優れた芳香族ポリアミド繊維であるケブラーが使用されています。これは宇宙船の熱遮断に用いられているものとほぼ同じポリアミド・ファイバーグラスに、B&Wがパテントを保有する特殊な処理法によってPVAを含浸させ、気密性を高めています。
ボイスコイルはウーファーユニットと同様にカプトンをベースに用いており、耐熱性を高めています。
808ではミッドレンジ2本をインライン配置するとともに中間にツィーターを挟んで適切な距離をとることで音像定位と音場再現性に理想的な結果を得ています。

高域には3.2cmドーム型ツィーターである(TX-32)を搭載しています。
振動板は801Fと同じポリエステル単繊維を編み上げたダイアフラムを採用しており、808ではボイスコイルまわりに耐熱処理と磁気回路に新たなアプローチが行われています。
ツィーターでは超高域再生を可能にするためにボイスコイルに細い線材を使用していますが、これが大入力時に温度上昇による断線の原因となります。そこで808にではマグネットとボイスコイルのギャップ内に磁性流体を封入しており、ボイスコイルの温度上昇を100℃の安全圏内に抑えています。また、高能率を得るために外磁型マグネットの磁束が全てギャップに収束するようReverse Magnetシステムを採用しており、リーケージフラックスを反発させるリングマグネットを追加してセラミック製の新開発マグネットの磁力を最大限ギャップに集中させています。

ネットワーク部にはB&W独自のコンピューターを用いた数値最適化設計技法を採用しています。
クロスオーバーポイントは400Hzと3kHzとなっており、スロープは4次バターワースフィルターによって24dB/octの急峻な減衰特性を得て不要帯域をカットし、同時にシンメトリカルな軸上特性を実現しています。
ネットワークを構成するパーツは大入力を前提として高品質部品を使用しており、コンデンサーも全てポリエステルタイプとすることによって低歪と良好な周波数特性を実現しています。
また、ネットワーク部は低域用、中域用、高域用とそれぞれ別基板に組まれており、3つを離して取付けることで相互干渉を排除しています。さらにプラグやコネクター類を一切使わずに全ての接続をケーブルに直付けで行うことで音質劣化を一層しています。内部配線材にも最大径のものを選んで採用しています。
各ユニット間の位相補正はクロスオーバーネットワーク内の電子回路状で行っており、ツィーターおよびミッドレンジユニットのハイパスフィルター回路にオールパスネットワークを合体させて、クロスオーバーポイントで適切な位相変換を行っています。

中域と高域用にレベルコントロールを搭載しており、それぞれ±1.5dBずつコントロールできます。

エンクロージャーは高密度パーチクルボード製で、高剛性化にも注力したものとなっています。また、外見上は一体構造ですが、内部でウーファー用エンクロージャーとミッドレンジ/ツィーター用エンクロージャーの2つに完全に分離しています。
ミッドレンジ/ツィーター用エンクロージャーにはQuarter-wave(1/4波長) Transmission Lineシステムという音響負荷システムを採用しています。このシステムではエンクロージャー内部に傾斜した補強板を設置することでユニット後部にテーパー状の空間を形成しています。これにより補強板が定在波の発生を防ぐとともに背面波を効果的に減衰させる作用を保ち、中高音の透明度向上に貢献しています。また、システムの名称はテーパー状の空間の長さが、この効果が働く最低音(808では80Hz)の1/4波長に等しいことから名付けられています。
ウーファー用エンクロージャーは220リットルのバスレフ設計となっており、ダクトのチューニング周波数は22Hzとなっています。内部はコンピューター解析をもとに内部補強を行うことでエンクロージャーの面振動(鳴き)が直接信号のレベルより60dB以上低く抑えられています。

B&W独自の電子回路構成プロテクション回路APOC(Audio Powered Overload Circuit)を搭載しています。
ウーファーユニットは巨大なパワーハンドリングを持つためこのAPOCを使用していませんが、ツィーター及びミッドレンジユニットのそれぞれに専用のAPOCを使用されています。これらのAPOCは独立して働きます。

マルチアンプ用入力端子を搭載しており、2ウェイ、3ウェイのマルチアンプ駆動が可能です。
外観仕上げはブラックとウォルナットの2種類のバリエーションがありました。

機種の定格
方式 3ウェイ・5スピーカー・Quater-wave Transmission Line方式/バスレフ方式・フロア型
ユニット 低域用:30cmコーン型(BT-300)x2
中域用:10cmコーン型(MT-100)x2
高域用:3.2cmドーム型(TX-32)
周波数特性 30Hz~20kH z±2dB(2m正面、フリーフィールド)
インピーダンス
出力音圧レベル 91dB/W/m(1kHz)
最大入力レベル 中高域:APOCシステム内蔵により上限なし。
低域:400Hz以下連続正弦波入力で200W
クロスオーバー周波数 400Hz、3kHz
外形寸法 幅653x高さ1,050x奥行510mm
グリル付き:奥行542mm
キャスター台座付き:高さ1,122mm
重量 78kg