Aurex XD-80
¥280,000(1981年頃)
解説
家庭用VTRと組み合わせることで高品位なPCM(Pulse Code Modulation)録音再生を実現したデジタルレコーディングプロセッサー。
PCMはアナログ信号をデジタル符号化してテープに記録する方式で、EIAJ標準化仕様に基いて原信号を44,056kHzのパルスにサンプリングし、そのパルスを量子化しています。これにより、85dB以上のダイナミックレンジ、10Hz~20kHzの周波数特性、0.015%以下の低歪率、実用上ゼロのワウ・フラッター、85dB以上のチャンネルセパレーションを実現しています。
ドロップアウト対策としてXD-80は、録音時6つのデータごとに2つの訂正符号(P符号とQ符号)と、CRCC(誤り検出符号)を付加記録しています。
再生時にドロップアウトが生じると、CRCCチェックやEIAJ規格による関係式を用いたシンドロームチェックに加え、H相関データチェック方式を加えた3重誤り検出方式により誤りを検出し、2個の訂正符号による2重の訂正機能により、確実な訂正を行っています。
さらに訂正不可能なデータが発生した場合、前後の正しいデータの平均値を用いる補正処理が行われます。また、集中してデータが失われるのを防ぐため、データを分散して記録するインターリーブという操作も行っています。
従来のPCM方式では不可能とされていたキュー/レビュー(約20倍速)/2倍速/3倍速/スローなどの可変速再生が可能です。また、静止音の再生も可能なため、正確な頭出しが可能です。
これらの機能は、強力な異常検出回路、有害信号排除回路、データ、同期信号分離に必要なクロック生成のための多重PLL制御システムにより実現しています。
2台のVTRデッキを接続することができ、デジタルコピーが可能です。
VTRによる再生デジタル符号と、録音入力をデジタル化した符号とのミキシングが可能です。
録音時、曲間の無録音スペースを造ったり、コピーしながら不要部分をカットするのに便利な、レックミュート機構を搭載しています。レックミュートはデジタル信号系で行うため、アナログ系でのノイズの影響を受けません。
録音・再生時にアナログ信号を扱うアンプ内にエンファシス回路を内蔵しています。400Hz以上の信号から行われ、10kHzで約10dBの高域補償を行います。
エンファシス回路はスイッチでON-OFFできるため、録音ソースによって使い分けが可能です。
レベルメーターを搭載しており、メーターモード切換スイッチにより、再生時のVTRトラッキング状態を表示することが可能です。これにより、メーター表示を最大にするだけで最良のトラッキング調整が手軽に行えます。
オートマチックモードセレクター(AMS)回路を搭載しています。再生専用とコピー専用の2つのVTR入力端子があり、デュプリケート入力にビデオ入力信号が入ると、自動的にミキシング/デュプリケート(コピー)が可能な状態となります。デュプリケート入力に信号がないときには、再び自動的にノーマルモードになります。
ミキシングとコピーの切換えはマスターボリュームの位置で行います。絞りきるとコピーに、それ以外の位置ではミキシングスタンバイとなり、それぞれの状態をインジケーターが表示します。
デジタルデュプリケート(コピー)/デジタルミキシング動作時に、再生デジタルデータは6dBのデジタルアッテネーターをON-OFF制御することができます。また、マスターボリュームを使って録音ソースのフェードイン、フェードアウトが録音レベルを変えずに出来ます。
エンファシスの有無、コピー禁止の有無、パリティ(訂正信号)Qの動作状態をインジケーターで表示します。
テープに記録されたこれらのデジタル信号は、再生時に自動検出され、インジケーターが点灯します。
専用ボリューム付のヘッドホン端子を搭載しています。
VTRで再生されるパルスは、PCMプロセッサー内で作られた録音信号に比べてひどく変形しています。このため、パルスの0と1を判定するスライスレベルが高すぎたり、逆に低すぎたりすると、正確なパルスが再現できません。
この問題を解決するため、XD-80ではADSD(オートマチック・データスライスレベル・ディテクター・コントロール)回路を搭載しています。この回路では、スライスレベルを自動的に最良のレベルに調整し、安定したデータ抜き取りを実現しています。
再生信号にノイズが乗る事でシンク(同期信号)が変形してしまい、タイミングのズレが生じるのを防ぐため、ASSC(アナログ・シンク・スライスレベル・コントロール)回路を搭載しています。
この回路では、スライスレベルを自動的に最適なレベルにコントロールし、このタイミングのズレを抑えています。
アナログ回路には、オーレックスがこれまでに培ってきた技術を下地に、高級アンプで採用された高性能素子を投入しています。
低インピーダンス化・異種金属接触の減少、振動の防止を促進させたuΛ-II型コンデンサー、ブチル巻きの銅箔スチロールコンデンサー、ブチル巻きの銅箔スチロールコンデンサー、大容量のGUコンデンサー(6.8μF/100V)、高音質の電解コンデンサーをパラレル使用するなど、音質を重視した構成となっています。
東芝、ソニー、三洋の3社により、昭和56年3月にEIAJでフォーマットが標準化された、PCMオーディオエンコーダー・デコーダーのデジタル信号処理用LSI
3品種の共同開発に成功しており、XD-80にもこのLSIが採用されています。
このLSIは、ADSD回路やASSC回路を搭載することで安定したデータの抜き取りを可能にしてます。また、3重の誤り検出方式と誤り訂正・補正方式を搭載しています。
また、14ビットと16ビットの両システムに対応しているため、EIAJ標準フォーマットの14ビットシステムに加え、業務用の16ビットシステムにまで使用することが可能です。
この新開発LSIにより、従来なら数100個のICを使用していたデジタル信号処理回路を、3品種のLSIで置き換えることが可能となっています。
機種の定格
型式 | デジタルレコーディングプロセッサー |
<信号記録形式> | |
信号記録形式 | NTSC TV方式準拠のビデオ信号を利用したPCM変調方式 |
符号形式 | EIAJ標準フォーマット |
オーディオチャンネル数 | 2チャンネル |
標準化周波数 | 44.056kHz |
量子化ビット数 | 14ビット相当 |
エンファシス | T1=50μsec T2=15μsec ON-OFF可能 |
誤り訂正方式 | P・Qによる2重訂正ワード |
<再生方式> | |
複合化 | 14ビット直線複合 |
誤り訂正 | P・Qによる2重訂正 1ブロック(6データワード及び2パリティワード/1H)中の2ワード誤りまで完全訂正 |
補正 | 平均値補正 |
エンファシス | エンファシスコントロールコードにより自動切換え |
<録再性能> | |
周波数特性 | 10Hz~20kHz ±0.5dB |
高調波歪率 | 0.015%以下 |
ダイナミックレンジ | 85dB以上 |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
<入出力端子> | |
ライン入力 | 端子形状:ピンジャック 入力インピーダンス:50kΩ不平衡 適合信号源インピーダンス:低インピーダンス -14dB録音レベル:90mVrms 0dB録音レベル:550mVrms 等価入力雑音電圧:10μV以下 最大許容入力レベル:Rec Levelボリュームにより任意 |
ビデオ入力 | 端子形状:ピンジャック 入力インピーダンス:75Ω不平衡 適合信号源インピーダンス:75Ω不平衡 最大許容入力レベル:2.0Vp-p 規定入力信号レベル:1.0Vp-p |
ライン出力 | 端子形状:ピンジャック 出力インピーダンス:75Ω不平衡 適合負荷インピーダンス:10kΩ以上不平衡 0dB再生レベル:最大2Vrms |
ヘッドホン出力 | 端子形状:φ6.3mmステレオヘッドホンジャック 適合負荷インピーダンス:8Ω以上 0dB再生レベル:最大5Vrms |
ビデオ出力 | 端子形状:ピンジャック 出力インピーダンス:75Ω不平衡 適合負荷インピーダンス:75Ω不平衡 規定出力レベル:1.0Vp-p(75Ω負荷) |
<その他> | |
入力電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 30W |
外形寸法 | 幅450x高さ93x奥行386mm |
重量 | 7.3kg |
付属 | USピンコード |