Aurex SC-Λ99
¥550,000(1981年頃)
解説
Λ電源やΛループ、シャーシ構造、部品、内部レイアウトなどあらゆる面で音質を追求したステレオパワーアンプ。
SC-Λ99はスイッチの切換えにより純A級動作とAB級動作の選択が可能です。
純A級動作では、疑似A級アンプのようにバイアスを変動させて歪を回避することがないため、音質の劣化がありません。さらに、増幅素子の最良ポイントにバイアス点を置いてあるため、素子の最も優れた特性が引き出せています。
また、AB級動作ではスーパーfTパワートランジスタと徹底した低歪回路の採用により検出不能レベルまでスイッチング歪を抑えています。
回路構成は、デュアルFET差動カスコード接続、3段ダーリントン接続、トリプルパラレル出力段の完全対称型となっており、パワートランジスタにはPc150WのスーパーfTパワートランジスタを使用することで、余裕のある許容入力を得ています。また、裸特性を重要視し、高域の位相補正用コンデンサーの容量と数を少なく抑えることにより、高域まで安定したゲインを得ることに成功しています。
デュアルFETには熱平衡の優れたワンチップローノイズデュアルFET(2SK270A-Nch、2SJ90A-Pch)を完全対称形で使用しており、入力段から出力段までを対称動作させて低歪率化を図っています。さらに、超高域まで安定した動作をさせるため、増幅段は全てカスコード接続による2段増幅回路構成としています。これによりSN比を従来よりも7~8dB改善しています。
スピーカーを駆動すると、振動板が動くとともに逆起電力が生じてアンプ内に流れ込み、スピーカー入力信号に歪を加えます。SC-Λ99はダンピングファクターが500と高く、出力インピーダンスを低く抑えており、スピーカーの逆起電力の影響を低減しています。
オーレックス独自のスーパーΛ電源を採用しています。
A級動作時はパワー段、ドライバー段、プリドライバー段のコレクタ出力インピーダンスが小さくなるため、電源部のインピーダンスの影響が出てきます。SC-Λ99ではSY-Λ88IIで採用したスーパーΛ電源を発展させAC電源→アンプ間のローインピーダンス化を促進し、プリドライバー段までの電源部に採用しています。これによりDC~100kHzまで僅か0.5mΩという超ローインピーダンスとローノイズを実現しています。
スーパーΛ電源部の中心部は差動1段とし、シンプル化を図っています。また、制御用電力トランジスタをパラレル使用することによって電源部に十分なゆとりを持たせています。
さらに、大型のパワー用トロイダルトランスとドライバー用トロイダルトランスの大小2個のトランスを搭載することでさらなる音質向上を図っています。
ローインピーダンス化を図るため、パワースイッチを大容量のものとするほか、整流器や新開発の電解コンデンサー、各種フィルムコンデンサーなどをパラレル使用しています。
電源用大型電解コンデンサーには新開発のものを採用しており、18,000μF/80Vx4、1.000μF/80Vx4、820μF/80Vx8、560μF/100Vx4を搭載しています。また、ローインピーダンス化に加え、異種金属接触の減少・振動防止の面でも改善を図っており、信号系および電源系の固体コンデンサーには全て銅箔スチロールコンデンサーとuΛ-II型Λコンデンサー、銅箔フィルムコンデンサーなどを採用しています。特にフィルムコンデンサーには特殊製法を採用することで広帯域にわたって共振を押さえ、歪感の少ない高音質を実現しています。また、電解コンデンサーもフィルムコンデンサーに対する考察をもとにして特殊製法で製造することで優れたエネルギーバランスを実現しています。
インジケーター部を除く全てのプリント基板に純度の高い無酸素銅280μ厚のガラスエポキシ基板を採用しており、ローインピーダンス化を図るとともに、基板の重量を増やす事で振動を低減しています。
出力段のエミッタ抵抗には、銅を抵抗体としたΛ抵抗を含むΛループを採用しています。これにより大電流の流れる経路は全て銅を使用した素子で統一されています。
放熱板には気化熱を利用するヒートパイプを採用しており、このヒートパイプに大型アルミ押し出しのヒートシンクを2個取付け、高い放熱効果を得ています。さらに、パワートランジスタ取付部にも大型アルミ材と2mm厚銅板によるサンドイッチ構造を採用するkとで、パワートランジスタの熱的なアンバランスを防止し、高い放熱効果とともに、トランジスタの鳴きを抑えています。
シャーシにはアルミ材を採用しています。
保護回路は直流電圧検出タイプに加えてヒートシンクの異常温度検出を備えたの2重保護回路を採用しています。
ACコードには15Aのものを採用しています。このACコードには機器間の電源の極性を合わせるため極性表示がついています。
機種の定格
型式 | ステレオパワーアンプ |
定格出力(20Hz~20kHz) | A級:50W+50W(8Ω) AB級:200W+200W(8Ω) |
全高調波歪率(20Hz~20kHz) | A級:0.0028%(定格出力時) 0.0025%(1/2出力時) AB級:0.003%(定格出力時) 0.0028%(1/2出力時) |
混変調歪率(50Hz:7kHz=4:1) | A級:0.0028%(定格出力時) 0.0025%(1/2出力時) AB級:0.003%(定格出力時) 0.0028%(1/2出力時) |
周波数特性 | DC~500kHz +0 -1.5dB |
出力帯域幅(8Ω、-3dB) | A級:5Hz~100kHz(0.005%歪) AB級:5Hz~100kHz(0.01%歪) |
入力感度/インピーダンス | A級:0.67V/50kΩ AB級:1.34V/50kΩ |
残留雑音(入力ショート) | 70μV(8Ω) |
SN比(IHF、Aネットワーク) | -128dB(入力換算) |
ダンピングファクター | 500(1kHz、8Ω) |
スピーカーインピーダンス | 4Ω~16Ω |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 370W |
外形寸法 | 幅450x高さ172x奥行473mm |
重量 | 30kg |